• 5日目 2000年3月12日(日)雨のち晴

    ◎起床〜散策
     何時に目が覚めたのかは覚えていないが、前日からの雨は未だに降り続いていた。ムムムムム。 また濡れるのかと思うと、雨はやっぱり憂鬱だ。しかし、テレビの天気予報ではいずれ晴れるといっていたので、 楽観的になれた。四国の天気予報は当たるはず。雨があがるまで何をしたかはやはり覚えていないが、 おそらく身支度や、年賀状の返事、この日のルートぎめをやったことだろう。朝食はカップ麺。 昨日二つ食べるつもりで買っていて、結局食べなかった一つだ。
     そんなこんなをしていると、管理者のおじさんがやってきたのでいろいろ雑談。休養センターと管理人さん 今は休養センターとして用いられているこの建物だが、以前は小中学校として活躍していたわけで、 その頃の思い出話など語ってもらった。その後天気も良くなってきたので、休養センターの周りをちょっと案内してもらう。
     すぐそばに「汗見川」という川が流れているのだが、驚くほどに澄みきっている。 今朝まで雨が降っていたというのに、濁りがない。雨が降ったら川は濁るものだとの思い込みがあるから、 これにはビックリ。砂が少なく、砂利や岩がメインだからだろう。
     ちょうど一部分水かさの高い部分があって泳いだら気持ちよさそうだな、とおもっていたら、 本当に昔は小中学校のプールがわりだったそうな。現在でも、マラソン大会のゴールにこの場所が設定されており、 ゴールするやいなや、選手達はこの川に飛び込むらしい!そのあとバーベQ大会でもあればもう最高だろう。 うらやましい環境。都会じゃ考えられない。
     軽く案内してもらった後は、一人でその辺を散策する。すぐそばにみえる山の頂にはなんと積雪があった。 これは寒いわけだ。
    田舎一本道  写真を何枚か撮り、いよいよ出発。おじさんにあとどれくらい四国を走るのか聞かれたが、 かっこよく「きめてませんが、1週間くらいは走りたいですね」と答えておいた。 そうしたら、「(休養センターに)また来くればいい」と言ってくれた。ありがとう。 雨が降ったときにはほんと助かる休養センターです。一訪の価値あり。

    ◎出発〜亀岩〜R439〜大豊町
     雨上がりの山中をぐんぐん下る。昨日は雨の降る暗夜で、心細かった道も、ドライな路面なら楽しい。 ビュンビュン。昨日はわからなかったが、汗見川の美しさは相当なものだ。 上流部分を比較すれば、四万十川よりも品があってよい。 四万十の中流域での美しさはそれこそ目をみはるものがあるが、上流域はあまり感じるものがないように思う。 (ろくに見てもいないのに、憶測で話してはいけませんね>自分)
     すぐに、「亀岩」というのが出現。文字通り、亀の形をした大きな岩が大きく構えているわけだ。亀岩 「亀」というよりむしろ「ラクダ」に見えなくもないのが楽しい。ここで何枚か写真をとって再出発。
     それにしても、天気がよくなって良かった。昨日は軍手で手をびしょびしょにしながら、 不快&寒い思いをしっぱなしだったのに、今日はいつものグローブでさらさら快適だ。やっぱり、 ツーリングはある程度(最低限かな)快適な方がよい。前日の雨中走行でチェーンの油が落ちていそうで心配なので、 本山町の中心部に出たところでチェーンに注油した。今回のツーリングには、チェーンオイルを携行している。 いい心がけだ。R439沿いの駐車場みたいなところで注油したが、ご近所の方々にじろじろみられた。 やっぱり僕は不審に思えるのかしら。
     通報されまいとすぐに再出発。左手に吉野川をみながら走る。今日は日曜日、天気もいいからだろう、 家族サービスと思われるファミリーカーが前を走っている。だらだら走る。

    ◎R32〜大歩危〜池田町
     池田町までひたすらR32を吉野川沿いに北上する。クルマが多い!この道は四国南北をつなぐ大動脈、 ファミリーカーやらトラックやらバンバン通る。白破線はたまにある程度。ほとんどが追い越し禁止だったようにおもう。 加えて、路面状況がよろしくない。道路を掘り返してそのあと埋めたような跡がガタガタするのが延々と続く。 運が悪いことにそれは僕の走る、北上する車線のみ。対行車線はそんな工事跡はなかった。ついてない。 せっかく天気が良いのに、ペースはあがらないしガタガタするしで、かなりイライラした。 今考えれば、大歩危の手前まではR32ではなく、その東側を並走する「谷間豊永林道」を走れば良かったと思う。 ツーリングマップルによると「断崖上に民家、道の上下に田畑、四国の激しさを知る」な〜んてことが書いてある。 なんと魅力的なことか!交通量も少なかろうし、次回四国に行くときは必ず通りたい。 とにかくR32はイライラする道だった。
     R32を走っていると、右手に大歩危というのがみえてきたが、パス。次に現われた小歩危もパス。 これらはともかく、「かずら橋」には行っておけば良かったといまさら後悔している。
     楽しくないR32をひた走ると、徳島県の最西部、池田町に入る。ここでR192に乗り換え。

    ◎池田〜R192〜徳島市
     池田町からは徳島市を目指してひたすらR192。面白くも何ともない道。おまけにところどころ渋滞している。 好印象なのは、時々見えた吉野川の美しい風景と、一部白破線二車線で狂ったように飛ばせる区間ぐらい。 この区間についても、今になってよくよく地図をみると、吉野川をはさんで並走する県12があった。 だらだら走るのが嫌いなんだから、ちゃんと地図をみてルートを吟味しなければならんな、と反省。 まぁ、何事も経験。この失敗を次に生かそう。
     徳島市の中心部は相当混雑していた。すり抜けもままならぬほど。今回のツーリングのなかでは最高に都会。 後の高松はもっと都会だが、いままでがのんびりしていたからインパクトがあった。 とりあえず、鳴門を目指してR11に乗った。

    ◎R11〜R28〜ココイチ徳島空港通り店
     R11は徳島市から鳴門市にかけては非常に太い道路で、なんと6車線もある。 交通量も多いが、片側3車線もあるから、 クルマの中を縫うように走るという反社会的行為でいままでの渋滞路のストレスから解放された気がした。 吉野川河口に架かる「吉野川大橋」はデカかった。6車線で、全長が2km弱ほどありそうな感じだ。  吉野川大橋を渡り、加賀須野大橋を渡りきったところで、鳴門方面を目指してR28に入る。 R28は二車線路で普通にクルマが流れていた。すぐに黄色い看板でおなじみのカレー屋「ココイチ」を発見! 走りながら、昼飯に何を食べるかずっと考えていたのだが、九州では普段よく利用するココイチだから迷わず入店した。
     記録のメモによると、このとき注文したのは「納豆カレー、ご飯400グラム、2辛」だった。 納豆400というのはいつものオーダーだが、それに「2辛」が旅の贅沢としてプラスされたのだと思う。 うまかった。隣のテーブルで高校生ぐらいの女の子二人がアニメか漫画の話で盛り上がっていたが、 その言葉が関西弁なのには驚いた。四国を旅しているつもりだったからびっくりしたけど、 考えてみれば鳴門と大阪は橋でつながっているのだ。 そういえば、3日目に通過した徳島県阿南市ではお好み焼き屋さんがたくさんあった。 それも関西の影響だろうか。
     カレーを食べ終えて、ひといきつく。たぶん、とり放題の福神漬けを食後のデザートにしたはずだ。 地図をみてこれからのルートも考えた。とにかく、鳴門の渦を見ることにした。
     店を出て、バイクの荷物の一つだった、休養センターで出たゴミをココイチのゴミ箱に捨てた。 休養センターではゴミを捨てることはできなかったので、 出したゴミ(カップ麺容器×2、赤飯の容器)をスーパーのビニール袋に入れて、 バイクの後ろの荷物固定ネットにはさんでいたのだった。 休養センターをでて最初の道の駅で捨てるつもりだったが、タイミングを逃して鳴門まで来てしまった。 僕の後ろを走ったクルマは、GSFに固定されたゴミがずっと視界にあったわけで、 不愉快だったろうと想像できる。幸せな家族のサンデードライブを................................ああ、申し訳ないことをした。

    ◎県11〜鳴門公園そば〜鳴門スカイライン
     腹ごしらえも済んで、さあ出発。鳴門を目指して県11をひた走る。 R28から県11に入るところで、爆音カスタムマフラーをつけて服はスカスカのセーターという、 ゼファー1100とZRX1100と一緒になった。進行方向からして、 走り屋があつまるらしい鳴門スカイラインへ向かうようだったので、「おてなみ拝見、勝負だ!」 と一人勝手に興奮してきた。 大型バイクを爆音カスタムして軽装で乗っているライダーをみると妙に意識してしまうのだ。 「バイクなめんなよぉっ!」って感じ。
     しかし、県11はファミリーカーが何台もいてペースがあがらない。 おまけに黄車線だったかな。ゼファーらはお構いなしにファミリーカーを抜いていく。 追撃したかったが、ファミリーの幸福な日曜日を台無しにするのはあんまりだからおとなしくしておいた。 その後鳴門公園までいくと、鳴門スカイラインへの交差点で先程のゼファーらが信号に引っかかっていた。 追撃のチャンス!本来の目的だった鳴門公園は混雑していそうだったから、 公園散策よりもエキサイティングなゼファー追撃を開始することにした。
     信号が変わり、鳴門スカイラインをするする走る。しかし、すぐに前走車のファミリーにひっかかる。 黄車線で追い越し禁止。欲求不満におちいるけれど、日曜日の午後、しかも行楽地なんだから、 まぁ、しょうがないことだ。なによりも皆の公道だし。 しかし、ゼファーくんはお構い無しに善良なファミリーを抜きはじめた。ようやるわ。 これ以上の追撃は、一般市民の、バイクに対する印象をさらに悪化させるので、あきらめた。 妙に悔しい。その後、白破線部分があらわれたので狂ったように走った。 一般市民の、バイクに対する印象をさらに悪化させてしまった。
     少し走ると、左手にドライブインか展望所みたいな所があらわれた。ここで、 驚くべき光景を目にすることになる。結構な広さをもつドライブイン駐車場に、 ものすごい数のスポーツバイクが並んでいるのだ。どこかのバイククラブのミーティングというわけではなく、 週末になると自然とバイク乗りが鳴門スカイラインのドライブインに集まってくるのだろう。 一般人にしてみれば、威圧感があって恐いだろうなぁ。とにかく、 レプリカブームの頃を彷彿とさせる光景に正直たまげた。昔の三瀬峠みたいだ。 景色はよさそうな場所だが、バイク乗りというだけで変な連帯意識・帰属意識を持つのは好きじゃないから、素通りした。 ああ、孤独なツーリングライダー。
     そのまま先に進むつもりだったが、対行車線をバイクがシューンと走って行ったこと、 ドライブインからの景色を写真におさめたかったこと、この2点が僕をUターンさせた。 遠くに見えるドライブイン、その駐車場から白のヤマハTRX850が出てきて僕と同じ車線を走りはじめた。 革ツナギで武装し、いわゆる走り屋っぽい雰囲気だ。走り屋の後ろを走った経験がないので、 このチャンスを逃してはならん、と思い、シフトダウンしてアクセルを開けた。TRXは本気では走っていないようで、 じきに追い付いた。その頃になると、TRXの前には大きなアメリカンバイクが走っていた。 直線では存在感のあるアメリカンバイクも、ワインディングでは速く走りたくても走れずなんだか申し訳なさそうだ。 せっかくの機会なのにペースがあがらず残念。TRXのライダーは、左手をハンドルから離して腰にあて、 首をひねってリラックスしている様を後続の僕に見せつける。つまり、「こんな状況でバトルする気はないぜ〜♪」 ということをいいたいのだろう。気持ちが良くわかる。 その後、アメリカンライダーはウィンカーを出してTRX850とGSF750に道を譲ってくれた。ありがとう。さぁ、バトル開始だ! 荷物満載ツーリングライダーなめんなよ!と意気込んだが、すぐさま前方にのんびりツーリングの大学生風ライダー2台の姿が現われた。のろのろ運転。 バイクならもっとシャープに走りなさい!!そんな状況にしびれをきらしたTRXがUターンしたので、 僕はのんびり学生ライダーの後ろを走ることになった。関西のナンバーだったが、法定速度付近でほんとにのろのろはしっている。 「バイクでぼ〜っと走ってると事故起こすぜ!」と余計なお節介を言いたくなる。TRXはUターンしたが、 この方向は鳴門公園行きなので、鳴門公園に行くのもいいかな、と思いはじめて、のろのろライダーの後ろを走ることにした。
     その後の交差点で学生風ライダーは高速インターの方に右折。僕は直進して、鳴門公園に向かう。 今度は周りをキョロキョロ見ながらのろのろ走るアメリカンカスタム系のクルマが前方に姿をみせた。 もう、うんざり。じきに鳴門公園の駐車場に着いたが、あまりに人が多かったので引き返すことにした。日曜日はだめだ。
     鳴門スカイラインをドライブイン目指して走る。ヤンチャな若者が4人ぐらいのったセダンが調子良く飛ばしていたので、 ガツンと抜いてやった。そんなこんなでドライブイン着。相変わらず多数のバイクが停車されており、 ライダーのみなさんは歓談中。隅の方にバイクをとめて、タンクバッグからカメラを取り出すなどして、 さぞかし関心がなさそうに振る舞う。写真を何枚か取った。
    ドライブインから  凄いバイクがとまっていた。WGPのレーサーNSR500を真似たバイク、CBR900RRだ。 ペイントからステッカーまでかなりの懲りよう。オーナーの話が耳に聞こえてきたが、 「仕事前に走りに行ってる」みたいなことをいっていた。相当バイク好きなんだろうな。 写真はこちら。 マジで凄いペイント。かなりの金がかかっていそう。ヘッドライトはどうなっているのだろう?
     バイク乗りの溜り場から早く抜け出したかったので、即出発。視線を意識したからか、 発進の際回転数をあげすぎてしまった。恥ずかしい..........。
     鳴門スカイラインをドライブインからR11の方にいくと、長い直線の下りがあって、ヘアピンになっている部分がある。 そこには一台のスーパースポーツが止まっていて、オーナーのおじさんが道の方をじっと見ていた。 おそらく、ここはギャラリースポットなのだろう。
     すぐ後には小鳴門海峡というのがあって、鳴門海峡よりは規模が小さいのかも知れないが橋の下では渦が巻いていた。 橋のたもとにバイクを止めて、写真を撮った。小鳴門の渦道路をみると、ロードスターにNSR250が追いかけられていて情けなかった。 ロードスターもうまい人が乗ると速いんだろうな。でも、そんなに速いペースでもなかったし、 NSRの人もレプリカで走り屋のメッカに来たんだったらもう少し頑張って欲しいものだ。

    ◎R11〜香川県白鳥町〜R318〜R377〜五名ダム〜県2〜県10(?)〜R11
     鳴門スカイラインを抜け、R11を走る。海沿いの道で、流れは悪くはないという程度。 途中で香川ナンバーの隼が他のバイク一台とつるんで走っていた。どうやらすり抜けはしない主義の人達らしく、 渋滞気味になっても黙々とクルマの後ろを走っている。隼のようなモンスターマシンは、 後ろから見るだけでも楽しいから僕も渋滞に巻かれてのろのろ走る。リッターバイクがノーマルでマフラー二本出しなのはかっこいい。 そこに必然性がありそうだから。大橋でホーネット250がマフラー二本出しに改造していたのにはびっくり。 金かかるだろうけど、はたして速くはなるのかなぁ。うるさくなったことは確かだろう。
     本当は、香川県に入ったところの坂元という交差点で県1に入るつもりだった。この道、ツーリングマップルには 「1.5車線舗装、海が間近に、うねる道筋"これぞ四国"」と書いてある。走りたかったが、見落とした。
     ツーリングマップルによると、R11は高松に向かって徐々に混みはじめるということで、これをパスするために内陸の方を走ることにした。 白鳥町に入り、R318に左折。このとき、ガソリンが切れかかっていた。すぐにスタンドがあるだろうとたかをくくっていたが、 なかなか現われずに焦った。白鳥町西山というところでシェル石油を発見、事無きをえた。 満タンにしてビックリ、ガソリンタンク容量19Lを上回り、19.1Lも入ったのだ!つまり、タンク内がほぼ空だったということだ。 危なかった。このシェルがなかったら、しばらく山道を荷物満載GSFを押して歩かねばならぬところだった。
     シェルのある交差点を右折、R377を走る。五名ダムを過ぎたところで県2に入る。 VIPカーを煽ったら譲ってくれたのでサンキュー。さわやかだ!県2を走り終えて、R11に出たが、県2をまっすぐ海の方へ抜けたのか、 県10を少し走ってR11に行ったのか記憶がないのが残念。県10のバイパス路のような道を少し走った記憶はうっすらあるような気もする。

    ◎R11〜高松市〜四国村駐車場〜R11〜坂出
     R11を高松方面に走っていると、街らしくなってきた。灯も、周りの風景も。 街から街へ移動していることが強く意識され、旅の雰囲気が盛り上がる。黙々と走るうちに屋島というところに着いた。 ここには「四国村」というのがあって、四国の伝統的な民家を集めた観光施設のようなものがある。 四国に昔ながらの風景を求めてきたが、この時点ではまだ巡り合えていなかったので、形だけでも体験しようととりあえず行ってみた。 だが、既に日が暮れる時間だということもあって、営業時間はもう終り。残念。
     四国村を後にしてすぐ、道端にバイクをとめてPHSの情報サービスで天気予報を受信した。さすが高松、電波の入りが極上。 天気予報ではあと2〜3日は好天が期待できることがわかった。よしよし。さぁ、再出発だ。R11を直進して高松市街地に突入する。 すごい都会だ。福岡の天神となんらかわらない。すでに日は沈んでおり照明の効果もあわさって、いつもの天神より都会を感じる。  番町で左折、直進、上天神で右折、R11をひた走る。結構やんちゃなクルマが多くて、シグナルGPやらで遊んであげた。 R11はこの区間は流れが速くて都市高速のような感じ。風圧をもろに受けるネイキッドバイクで飛ばしているとくたびれてきた。 5日間ずっと走っていると、さすがに疲労がたたる。ペースダウンして、第一車線をおとなしく走った。長く感じた。
     坂出ICの次の交差点で左折、そしてすぐに左折、さらに右折、R438に入った。琴平町の金神温泉を目指すためだ。

    ◎R438〜綾歌町〜R32〜琴平町&仲南町で温泉探し(廃湯)
     R438は何でもない道。マップルには「交通量が多い」と書いてあったが、僕が走ったときは数台がだんごになって走る程度。 ペースもまあまあ。途中の信号で他車をパスして幸せになる。綾歌町岡田交差点で右折、R32に乗る。無論これは国道、 スカイラインGTRに乗ったわけではない。
     琴平と仲南の境あたりに到達、地図ではこのあたりに金神温泉が記されている。マップルには、 「金神温泉:10PMまでの営業がうれしい、ハードな走行後の疲労回復に」などと書いてある。 まさに僕にピッタリ。田舎の公衆浴場で遅くまで営業している店はなかなかないから、10PMまでの営業はありがたい。 おまけにこの日は寒かった。体が冷え切っているから、温泉への期待はいやがおうにも高まるというものだ。
     しかし、温泉の存在を示唆するような目印・建造物は皆無。付近をあちこち走って探すがみつからない。 町の灯りもほとんどなく、寂しい。寒くて暗いなか、どこにあるのかわからない温泉を手繰り寄せようとすること程みじめでつらいことはない。 ほんと、泣きたくなる。10kmほど走れば仲南町に塩入温泉というのがあるらしいが、もう営業時間は過ぎているので不可。 探しても探しても埓があかないので、閉店間際と思われるガソリンスタンドに入り、温泉を尋ねることにした。
     スタンド前の歩道にバイクをとめ、ヘルメットを脱いで休憩所に入る。 中には、経営者でかつ夫婦であろうと思われる中年の男女がいた。男は掃除を、女は札束を数えている。 「すいませーん、ちょっとお尋ねしたいんですが」こう女にきりだしたが、札束を数えるのみ、反応がまったくない。 再度トライして、「あの〜」といいかけたところでそれをさえぎるように「なんですかっ!」と不機嫌まるだしの対応をされた。 さすがにカチンときたが、冷静を装い金神温泉を探している旨のことを伝えた。すると、「あっちにきいて」と男の方をあごで示された。 またまたカチンときたが、ぐっとこらえて男に尋ねる。すると、「もうなくなったよ」との返事がそっけなく帰ってきた。 ああ、大ショック。あてにしていた温泉がないのだ。温泉を心のともしびに走ってきたのだが.........。
     この日はついてない。走って楽しい道には巡り合えなかったし、温泉には恵まれないし。 そしてそして、なによりもなによりも、このガソリンスタンドのおばさんの不機嫌な態度が本当につらかった。 「四国の人はみんないい人」なんて勝手に思い込んでいた自分が悪いのだけれど。 とにかく、一刻もはやく香川県から抜け出したくなった。今考えれば馬鹿げたことだけど、 なんだか香川が忌まわしく思えた。これしきのことではへこたれずに次の出会いをみつけるのが本当だろうが、 この日は本気で香川が嫌になった。逃げるようにR377を愛媛方面へ向かう。

    ◎R377〜豊浜町〜R11〜愛媛県  R377は緩やかな道。勾配がある。あるところを過ぎればほとんど直線。ここで重大なマシントラブルが発生! エンジン右側シグナルジェネレータカバー接合面からのオイル洩れである。以前からここからはオイルが洩れていた。 しかし、完治には8000円ぐらいしそうなジェネレーターカバーを手に入れる必要があり、 にじむ程度というまあ黙認できそうな現状に照らし合わせて放置していたのだ。放置はやはりまずかった。 R377を走っている最中、ブレーキペダルのあたりがひどくぬるぬるしはじめたのだ。明らかにオイル洩れ。 洩れたオイルが足元に飛散しているのだ。足元をみても、真っ暗闇の中でオイルの洩れ具合は確認できない。 いったいどの程度洩れているのだろうか?もしも「ドバドバ」洩れているのであれば、すぐにでも焼き付きを起こすだろう。 そこまでひどくなければ、今夜ぐらいは持ってくれるだろう。出発前に、万が一オイル洩れがひどくなったとき、 少しでも走行可能距離を延ばす目的でエンジンオイルを多めに補給しておいたのだ。 焼き付く寸前まで進行すればおそらく走行フィールがひどく悪化するだろうから、 それを感じない限りは走行可能であるとみなし、とにかく走ることにした。
     R377を走り終え、豊浜町姫浜というところで左折、R11に入る。少し走ったところで、右手にセブンイレブン発見。 いいかげん、腹も減ったので、入店する。一応、讃岐うどんも食べたかったから、腹がふくれてしまわないよう、 ここでは軽く食べる程度にする。暖かいジョージアとパンを買って、店の前でむしゃむしゃ。
     間食を食べ終えたところで、先程のオイル洩れを外観チェック。確かに洩れてはいるが、まだ致命的ではないようにみえた。 再び走り出す。
     洩れの程度はそれほどでもないにしても、いつ堰が崩壊してドバーッと流れ出すかわからない。 爆弾を抱えているようなものだ。ビクビクしながら、夜の四国道をひた走り続けた。
     知らなかったのだが、豊浜町というのは県境であり、ちょっと走っただけでもう香川は脱出してしまった。 すなわち、すでに愛媛県。やはりうどんは香川で食べたかったので、その点残念だった。

    ◎R11〜川之江市〜西条市
     ひた走って、川之江市や伊予三島市のあたりの工業地帯にくると、それまでの厳寒ぶりが緩和されて、 多少暖かくなった。冬の夜道を走るものにとっては歓迎すべき変化だ。ずっと続いてくれたらな、 と思ったがすぐに寒くなった。
     うどん屋はなかなかみつからない。特に、夜遅くになってしまっては闇の中にうどん屋の看板をみつけるのは四国では絶望的のようだ。 途中、「セルフうどん」なる黄色い店をみつけて興味をひかれたがどうも面倒くさくて通過してしまった。
     ひもじい思いをしながらひた走る。若干ではあるが他車があり、80km/hほどののんびりペース。 たまの信号待ちで前にでる。そんなことを繰り返しているうちに、西条市に到着してしまった。 研究室の先輩の故郷なのでちょっと市街地を回ってみた。夜も遅いためか(22〜23時ぐらい)、人気はあまりなくて寂しかった。 オレンジ色の街灯が灯る市民センターのような施設の前にある電話ボックスで暖をとりつつ電話行為をした。 目前にはコインランドリーがあって、若い人がチョコチョコ出入りしている。
     市街地にとどまってもしょうがないので、野宿できる暖かそうな場所を探しに出発。R11からR196に乗り換え、 今治方面を目指した。

    ◎R196〜湯の浦〜今治〜糸山公園〜湯の浦  黙々と走っていると、左手に道の駅湯の浦が現われた。できたてホヤホヤの道の駅だ。 ここでトイレに行った。寒いので自動販売機で缶入りのコーンポタージュを飲んだような覚えがある。 ここの道の駅で寝ようかとも思ったが、20km程先にあるしまなみ海道入口付近に自転車乗りのための施設があって、 シャワールーム等備わっているとの情報を得たので、ためしに行ってみることにした。
     おそらくしまなみ海道開通にあわせて整備されたと思われるバイパス路をひた走る。交通量は少ない。 ここには速度超過をチェックするポイントが一か所あって、 測定箇所で速度超過をすると何キロオーバーかがその先の電光盤に表示される。 かなりビックリした。そんなに飛ばしていなかったためか、27km/hオーバーと表示されて赤色灯のようなものが回るだけで、 証拠写真撮影のフラッシュ等はなかった。暗くて装置の様子は確認できなかったが、 調子にのって超過がすぎるとオービスのような働きをするかもしれない。速度超過を警告する設備は珍しくない (香川では「右車線車両スピード落とせ」などと表示する設備があった)が、 具体的な超過値を表示するものは珍しいのではないか。一度お試しあれ。最高速アタック等にいかがかな?(冗談ですよ)
     大きな交差点で右折、R317を直進して市街地に入る。つきあたりを左折。 今治北インターを過ぎたあたりで右折、糸山公園方向へ行く。途中には休憩施設のようなものがあり、 これが情報にあったサイクルセンターだとわかった。とりあえず駐車してうろうろするが、 夜も遅くて営業はしていない。寝泊りできそうな場所もみあたらない。骨折り損だった。
     せっかくきたので、糸山公園の方まで行くことにした。展望がよく、夜の大橋が見える。 若者が多少いた。なにやってるんだろう。もうこの場所にいてもしょうがないので、 道の駅方向へ引き返すことにする。今度は速度超過電光盤のお世話にはならないようにした。
     道の駅湯の浦へ戻り、テント設営可能な場所を探す。敷地の隅の、芝生になっているところに決定。 そばには天皇来訪記念の植樹があったので、襲撃されたりしないか心配。テントを張る。 そばに駐車している1BOXカーにはおそらく車中泊の人がいるだろう、 僕がゴソゴソやっているのに気がついたら何事かと不安になるだろうな。 一段落したところで缶入りポタージュスープをさらに2本くらい飲んだ気がする。 この日は結局温泉に入れなかったし、晩飯に相当するのがパンとジョージアだけだったので、 温かい缶スープを2本買うくらいの贅沢は許されるだろう。 バイクは駐車場にとめてクルマに接触されたら嫌なので、テントそばの歩道(広い)にとめさせてもらった。 接触される心配はないが、国道からまるみえなので、暴走族に狩られたらいやだなぁ、と多少不安になる。 僕は意外に神経質なのだろうか。
     今治の夜は寒い。暖を求めて香川から走ってきたが、結局寒い。ムチャクチャ寒い。 僕の寝袋と考えられる限りの厚着では歯がたたない。日程中最も冷えた。どうにも寝つけない。 せめて温泉に入れていたらなぁ、もしくは温かい汁物でも食べれていたらなぁ。 瀬戸内は暖かい、というイメージがあったが、やはり地域によるのだろう。 社会科地理の知識があれば、もっとよい結果が得られたかもしれない。 中学校時代の勉強不足がたたった。とにかくおやすみなさい。
  • (5日目執筆2000.8.28)
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